TATSUMI FUJINAMI 50th ANNIVERSARY
国立代々木競技場 第二体育館
17:00開場 18:30開始
THE NEVER GIVE UP TOUR FINALDRAGON EXPO 1971
大会のポイント
2022年、ドラディションの掉尾を飾る『TATSUMI FUJINAMI 50th ANNIVERSARY THE NEVER GIVE UP TOUR FINAL』が12月1日、国立代々木競技場第二体育館で開催。10団体30選手参加による豪華絢爛なメモリアル大会を締めたのは、新日本プロレスのエース・棚橋弘至と藤波辰爾による20年ぶりの一騎打ちだった。お互いの歴史とプロレスの基本を確かめ合うような攻防から、棚橋が必殺のハイフライ・フローを決めて3カウントを奪取した。試合後には本来であれば、今大会に来場を予定していた亡き師匠・アントニオ猪木さん(10月1日に死去)を追悼する10カウントゴングが鳴らされた――。
◎試合前セレモニー
兄弟ユニット・PPP(KENT YAMAGUCHI & Yuto Kosaka)が制作したドラディションの新オープニング曲がPPPの生演奏によって館内に鳴り響く中、大会がスタート。場内スクリーンには藤波の歴史を振り返るVTRが上映され、約半世紀にわたるドラゴンヒストリーを全員で味わいつつのオープニングとなった。
◎第1試合
アレク&竹村&MAZADA&倉島 vs 三州&TAMURA&田島&吉江
ともに1995年に旗揚げした第1次無我のリングでデビューを果たした「無我三銃士」とアレクサンダー大塚がカルテットを結成し、出自も活動団体もバラバラな吉江、田島、TAMURA、ツバ吉と対戦。TAMURAがローンバトルを強いられる場面が目立つも、吉江の体重とTAMURAのスピーディーな動きで形勢逆転。だがMAZADAのリードで戦局を読みつつツバ吉を巧みに孤立させると、アレクがジャーマン、続いて倉島がブレーンバスターからガッチリと胴をクラッチしてのジャーマンでツバ吉を叩きつけて3カウント奪取。「ドラディションの門番」の任務をキッチリと遂行した。
◎第2試合
新崎&AKIRA&越中 vs 望月&田中&高岩
全員が30年前後のキャリアを誇る安定の6人タッグマッチ。越中のヒップアタック連打が冴えわたり、平成維震軍時代に培ったAKIRAとの連係に新崎のアシストも加わりつつ圧倒した越中組だったが、スピードで勝る高岩組を捕えきれず、AKIRAのムササビプレスもカットされてしまう。一気呵成にデスバレーボムでAKIRAを叩きつけんとした高岩だったが、クルリと体勢を入れ替えたAKIRAが高岩を丸め込んで3カウントを奪取。今年、キャリア30年を迎えた高岩に、さらにベテランの妙味を見せつける格好となった。
◎第3試合
高橋ヒロム vs LEONA
現・新日本プロレスのジュニアヘビー級戦線の中心に位置する高橋ヒロムとLEONAが注目の一騎打ち。四方八方から飛んでくるヒロムの変幻自在なエルボー、フェイントをも織り交ぜた攻撃に苦しんだLEONAは、何とか捕獲を試みるも、なかなか動き回るヒロムを捕えることはできない。
場外乱戦の後、リングを縦横無尽に走り回るヒロムにドロップキックを命中させたLEONAは、父親譲りのドラゴンスクリューからニードロップでワンクッションを挟んだ上で、ようやく足4の字固めに捕獲。巧みに脱出してしまったヒロムはたちまちペースを取り戻し、LEONAが狙う人間風車、ドラゴンスープレックスもこらえて許さず。
互いに首固めを狙い合う中、抜群のタイミングでトラースキックを叩き込んだヒロムは「ヒロムちゃんボンバー」を炸裂させ、最後はビクトリー・ロイヤルで3カウントを奪い取り、藤波辰爾が切り開いた新日本ジュニアの最進化系をLEONA自身に叩きつける格好となった。
半年前(6月3日、新日本プロレスの日本武道館大会)、特別立会人を務めた藤波の目前で、前人未到の同大会3連覇を達成し「藤波さん、ジュニアヘビー級を広めていただき、ありがとうございます」と感謝の言葉を述べたヒロムは「残念ながら、LEONA選手からは藤波辰爾を感じることはできませんでした。でも、LEONA選手、それでいいと思います。唯一無二のプロレスラーを目指してください」とエールを送った。
敗れたLEONAは「悔しいです。新日本プロレスに触れて、高橋ヒロムに触れて、完膚なきまで負けた……悔しいです」と唇を噛みしめていた。
◎第4試合
真霜&関本&丸藤 vs KENSO&稲村&樋口
ノア、大日本、DDT、2AWのトップ選手が一同に揃った豪華な6人タッグマッチは、序盤から激しいイニシアチブの奪い合い。まずはKENSOが腰ひもで丸藤の首を絞め上げ、場外戦をリード。現・2AW無差別級&レジェンド王者である真霜とノアマットで存在感が急上昇中の稲村は激しいエルボー合戦。続けて現・KO-D無差別級王者の樋口と稲村が機動力を生かしたダブルショルダータックルで軽量の丸藤を吹っ飛ばして見せた。
全選手がリング内に雪崩れ込む中、樋口のバックを取った真霜ごと、関本が豪快に放り投げるかのような「眉山」で圧倒的なパワーを見せつける中、最後は4年ぶりのドラディション参戦となった丸藤がタイミングを見計らった不知火発射でKENSOから3カウント。存在感を示しつつ大乱戦に終止符を打った。
◎セミファイナル
ジェイク&ザック&船木 vs 長井&鷹木&内藤
セミファイナルではこの大会でしか、まず見ることができない異色の組み合わせが実現。ドラディション初参戦となる内藤哲也率いる「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」(LIJ)と長井満也が初合体し、船木誠勝が新日本と全日本の人気選手を従えて対峙するという対決は、観客ばかりか戦う本人たちをも未知の世界へといざなった。
鉄の結束を誇るLIJは試合前から、長井のグータッチを拒否し「あくまでビジネス上の関係」を強調しつつゴング。どの組み合わせも新鮮だったものの、とくに新日本のリングで戦い慣れた内藤、鷹木とザックの攻防はリズミカルな流れを作り上げる。だが、ここに長井が入り、さらに長井にとって第2次UWF時代の先輩にあたる船木が参入すると、お互いに意地の蹴り合い殴り合い。
最後は案の定、孤立してしまった長井にジェイクのヒザ蹴りがヒット。さらにザックのサッカーボールキックが叩き込まれ、棒立ちになったところを船木がトドメのハイブリッドブラスターが炸裂し3カウント。長井は孤独と黒星を噛みしめる結果となった。
◎メインイベント
棚橋弘至 vs 藤波辰爾
藤波と棚橋の一騎打ちは、ちょうど20年前の2002年10月6日に後楽園ホールで開催された『無我』興行のセミファイナル以来。当時、2人は新日本プロレス社長と伸び盛りのヤングライオンという関係だった。試合は逆十字固めを仕掛けようと焦る棚橋を、下から丸め込んだ藤波が3カウントを奪って勝利している。
今年の4月末、新型コロナウイルスに感染した藤波が5月12日の後楽園ホール大会を欠場。かつての愛弟子・棚橋に代役を依頼したことで、20年ぶりとなる一騎打ちへと気運が高まっての20年ぶりの対戦となった。
試合前、藤波と親交の深い中尾彬さん&池波志乃さん夫妻、指揮者の佐渡裕さん、タレントの木村祐一さんから届いたお祝いのビデオメッセージが館内に流され、続いて「激落ちくん」や「バルサン」でおなじみのLEC株式会社・永森貴樹社長がリング上から「藤波選手、デビュー50周年、誠におめでとうございます」と激励の挨拶。さらにスペシャルリングアナウンサーとして田中ケロ(田中秀和)さんがリングイン。田中リングアナのコールによって、藤波のプロレス入りのきっかけとなり、またデビュー戦の相手でもある北沢幹之(魁勝司)さん、蝶野正洋、武藤敬司、藤原喜明、長州力ら新日本プロレスOBが続々とリングイン。それぞれが試合前の藤波に激励のメッセージを送った。
スペシャルゲストの記念撮影後、場内が暗転し、いよいよメインイベントがスタート。レジェンドの面々が最前列で見守る中、棚橋の入場に続いて藤波の歴代入場テーマ曲のメドレーバージョンが流れると、最後は亡き師匠・アントニオ猪木さんの代名詞である『炎のファイター』とともにガウン姿の藤波が姿を現しリングインした。
裁くレフェリーは、この試合のために招聘された元新日本プロレスの田山正雄レフェリー。ゴングと同時にロックアップの体勢となり、やや劣勢となった藤波がポジションを入れ替えつつ、寝技へと引き込むとサイドベッドロックやキーロックで棚橋の動きを止めてみせた。
スタンドに戻り、再び手四つの体勢となると、今度は藤波がパワーで圧倒。棚橋はショルダータックルで藤波を吹っ飛ばし、ストンピングを叩き込んだが、藤波は腕一本を掴むと、慌てずに逆十字固め。脱出した棚橋がインディアン・デスロックで下半身捕獲を試みるなど、新日本の伝統と歴史を感じさせる基本技の攻防に終始した。
秘技・ドラゴンバックブリーカーで棚橋を叩きけつた藤波は、そのままサソリ固めで棚橋の腰破壊を狙うも、脱出した棚橋は藤波を蹴り上げる。待ってましたとばかりに、棚橋の蹴り足をキャッチした藤波はドラゴンスクリューから足4の字固めを狙ったが、棚橋は20年前に藤波に敗れた技術をおさらいするかのように、下から首固めへと丸め込んでカウント2。
ロープに走った棚橋をスリーパーで捕獲した藤波は、スタミナ切れを警戒し、そのままドラゴンスリーパーへの移行で勝負をかけるも、棚橋は落ち着いてロープへと脱出。10分が経過した。
ロープに飛ばされた棚橋は飛び技のスリングブレイド発射で反撃開始。コーナーからダイビング・ボディアタックで一気に勝負をかける。1発目は何とかカウント2で切り返した藤波だったが、棚橋は間髪入れずに倒れたままの藤波にハイフライ・フローを発射。田山レフェリーが3カウントを叩き、藤波の50周年記念ツアーは、かつての愛弟子・棚橋が恩返し的に介錯する形で藤波からシングル初勝利を奪った。
◎試合後のセレモニー
10月の福岡、大阪大会でも実施されたが、アントニオ猪木さん逝去(10月1日)後、初の首都圏開催大会ということで、出場全選手、ゲストの新日本OBたちがリングに集結し、改めて追悼の10カウントゴングが打ち鳴らされた。
マイクを握った藤波は「この50年、いろいろなことがありました。デビュー戦の相手をしてくれた北沢さん、本当にありがとうございます。あれから50年、こんなにも素晴らしい選手たちと渡り合うことができました。そして最後に、師匠である猪木さん。本来ならば、猪木さんもこのリングに立ってくれる約束でした。それが叶わぬこととなりましたが、我々レスラーはこれからも猪木さんの遺志を継いで邁進していきます。どうぞ、これからもプロレスを宜しくお願いします。本日はありがとうございました」と挨拶。最後は恒例の「1・2・3・ダーッ!」をもって、自身の50周年記念ツアーを締めくくった。
試合結果
竹村 豪氏
MAZADA
倉島信行
13分42秒
ジャーマン
スープレックス
ホールド
TAMURA
田島久丸
吉江豊
AKIRA
越中詩郎
丸め込みから
片エビ固め
田中将斗
高岩竜一
ビクトリーロイヤルから
片エビ固め
関本大介
丸藤正道
不知火から
エビ固め
稲村愛輝
樋口和貞
鷹木信悟
内藤哲也
ハイブリットブラスターから
体固め
ザック・セイバーJr.
船木誠勝
ハイフライフローから
片エビ固め
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